※原因ふめいの文字障害;;
読みにくくてすみません。
コピ本はちゃんと直っていますのでご安心を。
「ん・・・っ《 隙間風もないのに、玄関が冷たく感じてしまうのは、ここが外の世界に一番近いところだからだろうか。 忍の足がバックに当たり、ガコンっとバックの中身が散乱する。 その音に忍がびくっと反応するものの、宮城は気にした様子もなくキスを続けた。 忍もバックのことより口内で絡まる舌に神経を刺激され、バックのことなどすぐ忘れてしまう。 彼女の中でも、なにかが崩れていく。 「ぁッ・・・ん・・・はぁ・・・っ《 忍のシャツの中にもぐりこんできた指はとても熱く、彼女の心臓を鷲掴みにする。 掴んで、解して、租借するみたいなその手の動きに、忍はたまらなくなった。 食べられるものなら、いっそ頭からまるごと食べて欲しいとさえ、願った。 キスする度に瞼の裏で光が過ぎる。 頭の中でもそれは弾けて、理性を焦がしていく。 混濁した理性が下肢に伸びた手首を捕らえ、忍は必死に首を横に振った。 これ以上はダメ、 もうそこを越えてしまったら私、また何かが変わってしまう・・・。 「なんだよ、恥ずかしいのか?《 「あ、当たり前でしょうッ ここどこだと思ってる・・・!《 ニヤニヤとした意地悪な笑みに、忍はムカついた。 恥ずかしいに決まってるだろう! 外に声が聞こえてしまうかもしれないし、電気で明る過ぎるし。 第一、玄関はこういうことをする場所ではない。 玄関は家の入り口。 人々の行き交うこんな所でなんて・・・恥ずかし過ぎるっ 「お手をどうぞ《 立ち上がろうとする忍へ、大人を気取る手が伸びてきて。 「ん。《 忍は伸びてきた手を素直に貸り、なんとか立ち上がったものの、がくんっと膝が折れてしまった。 思ったより体に力が入らず、足が覚束なかったのだ。 「だ・・・大丈夫か?《 「お、起こしてっ《 いくら体を触られたからって、こんな骨抜きにならなくてもいいじゃないか!と自分の体を恨む。 だが元を正せば、無駄に感度が良くなってしまったのもすべて眼前の恋人が元凶ではないか。 へなへなになった体を抱き起こされ、なんとか立ち上がる。 宮城の腕の中はとても広くて、少し汗の匂いがした。 あぁくそ・・・ッ ここ・・・安心する。 ぎゅっと抱きしていると、宮城の顔が降りてきて優しいキスを彼女にした。 唇を割って入ってくる舌に口内を撫でられ、また体が震える。 唇が離れても、眼差しは未だ忍を見つめていて、もうそれだけで、彼女は嬉泣きをしてしまいそうだった。 セックスなんてしなくても、これだけで十分幸せだ。 幸せいっぱいの忍だったが、ふと、人の気配を感じた。 なんだか視線を感じる。 感じる視線の元を探していると、下駄箱の上の鏡に映った髪の長い女が、こちらを見つめていた。 同じ色素の薄い髪、白い肌、グレイの瞳。 その姿に、 思わず、声を失った。 姉 そこにいたのは、『理沙子』だった。 忍は、『あの』エプロンを初めて見た時の気持ちを、思い出してしまったのだ。 私は、宮城の前妻の妹。 それはすべて、姉と同じ血の記憶の元、形成された『忍』という女。 理沙子と同じ血の流れた、正真正銘のもうひとりの『理沙子』という女。 当時の私は、姉貴の婚約者とは知らず、宮城に恋をした。 しかしそれは私の一方的な片想いで。 私はなんとか女の子らしくなろうと、短かった髪を伸ばし始めた。 振り向いて、欲しかったのだ。 例え図書館ですれ違う程度でも、あっちが私を知らなくても・・・。 いつか、話しかけてもらえる日がくるかもしれない。 けれどそんなことありえないとも思っていて。 だったらせめて髪を伸ばして、少しでも彼の興味を惹ければと思った。 そんなある日に訪れた劇的チャンス。 上良に絡まれる私を、あなたは助けてくれた。 あぁこれが運命なのね。 そして次の瞬間、天国にいた天使が羽をなくして奈落の底。 あなたは姉貴の婚約者だったと知らされた。 結局、あなたへの想いに押しつぶされそうになって私は海外留学。 けれどどこにいたって、あなたへの想いを忘れることなんか出来なかった。 数年後、二人は離婚して。 私は勇気を振り絞り彼に告白。 イロイロあって、現在は彼の恋人の座になんとか座らせてもらっている。 夢のような話だ。 夢のような話のはずなのに。 忘れていた感情がぶり返す。 そう、ただ忘れていただけ。 「どうした?《 心配そうに、鏡の国を覗き込む宮城の隣にはやはり「理沙子《がいた。 二人はとても、お似合いの夫婦だったんだ。 かつては、誰も彼もが、彼らを祝福していた。 そして光の反射で、「理沙子《の着ている物が白く見えた。 それはまさに光の悪戯。 海馬に焼きついた一場面が鮮明に蘇っていく。 DVDなら停止ボタンを押せば済むことなのに、人間の脳は上便で優秀だ。 脳裏に浮かんだのは姉貴と宮城の結婚式だった。 顔を背け鏡から逃げたはずなのに、記憶のビデオは流れ続ける。 何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も、同じ場面を繰り返し。 繰り返し、繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し 繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰 り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し。 狂って、しまいそうだ。 「忍?《 その吊前に、忍はようやく目が覚める。 吊前だけでない、その声でなければ意味がなかった。 そう、この声だ。 「忍、顔色悪いぞ《 あぁ・・・安心する。 「なんでも・・・ない《 心配そうに頬に触れてくる指のぬくもりで、自身の血の気が引いていたことに気付いた。 |