入金をして発送の知らせがきたのは、一昨日の晩だった。


 何も言ってくれなきゃ、不安に・・・心配になるじゃんっ


 空の言葉が気になり、ネットで色々調べたみたところ、忍はある通販会社のサイトへたどり着いた。
 それは所謂、『大人の玩具』専門通販サイト。
 忍はそこである商品を購入し、現在、宅急便さんから商品を受け取っていた。
 自分で頼んでおいてあれだが、正直、商品の到着に戸惑ってしまっていた。
 硬い段ボールは忍を追い詰めるように、ずしりと重い。
しかしもう後には引けない。
 俺は後悔と不安を振り払い、腹をくくり、段ボールを開けた。
 白い発泡スチロールの中から出てきたのは、パソコン画面より少し大きめな『それ』。


「・・・・・・ッ」


  リアルな形をしたそれに、思わず息を飲んだ。
  それは手のひら二つ分でもはみ出るぐらいの大きさで、透明なプラスチック製の模造品。
 男性器を象った模造品だった。

  一番リアルじゃないの選んだはずなのに、なんでこんなに生々しいんだ・・・っ

  制作者の腕を誉めるべきかその着眼点に呆れるべきか、性器の特徴をよくとらえており、血管やくびれなどがきちんと
象られていた。
 透明といえど光に反射してできた影がいやにリアルで、紅潮せずにはいられない。
 中には何故か機械が入っており、手で押さえるところに小さなスイッチがあった。
 どう動くのかは分からなかった・・・分かりたくもなかった。
 
 だがまず、触らなければ始まらない。

  忍は友人の言葉を思い出し、これも宮城のためとそれを手に取った。
 軽くて持ちやすいが、長い間直視する勇気はない。
 ひとまず製品だしと水で洗った。
 リビングへ戻り、意を決し、愛しいひとの顔を頭に浮かべながら口を開いた。

  こうなったら、
 絶対うまくなってやるんだからな・・・っ

 玩具を手に取り、向き合う。
 だが最後まで、恥ずかしいという気持ちは捨て切れなかった。
 口に含んでも、あの独特のにおいや味はしないというのに、唾液はフェラする時と同じく、模造品をたっぷりと濡ら
していった。
  口に入らなかったところも丹念に舐め、舌で先端を軽くえぐったり指に力をいれたりする。
  濡れ光る玩具は、まるで巨像のような美しさを持ちながらも、その隠美は明るい艶やかさではなかった。

  これはだだの無機物で、なんの恐怖も抱く必要はない。
 勝手に動き出すわけでも、玩具に意思や命があるわけでもない。
 なのに何故か、いざ体の中に埋め込む時は勇気がいた。

 
 これも・・・宮城のため。
 宮城と、気持ち良い関係を築くためなんだ・・・と。
 思い浮かぶのは、カーテンをひき、柔らかな朝日を浴びるあのひとの横顔。
 あの横顔を、不安で歪ませたくないっ
 悲しませたくないっ
 いつだって、恋人の俺が、心地良く包み込んでいたいんだ。
 

「は・・・ぁ」

 それにはこれが、必要だった。
 
 口で蓋を開け、チューブを押すと、中からどろり・・・とした液体がでてきた。これを玩具と感部にたっぷり塗る。
 ローションをつけ、準備ができたら、ほぐれてきた蕾にそれを当てる。しかし、拒絶反応なのか、先ほどまで開き
かけていた蕾が堅く閉じてしまった。
 これでは練習にならない。
 慌てて指をいれ掻き回し、再びほぐそうとしたが、緊張してなかなかほぐれない。
 
 こんなところでぐずぐずしている暇はない。
 困った時は説明書。ベットの上の説明書に目をやると、「パートナーのことを思いながら触ってみましょう」と
書かれていた。
 パートナーって・・・宮城のことか?
 説明書には「恥ずかしいなら目を瞑ると感度が良くなります」とも書かれていて。
 忍はそうかと目を瞑ると、早速宮城のことを思い出しながら手を動かした。
  恋人の顔を思い出しながら、胸や腰を、細やかな手つきで弄る。
  そう、これは俺のじゃない、宮城の手だ。
 宮城の大きなあの手が、俺を触ってくれてるんだ。
 くすぐったいと油断をすると、ゾクゾクとした快感に変える魔法の手。
 宮城が触っていると思うと、忍の体は次第に変化を表し始める。
 まるで自分の体じゃないみたいに、体中が熱に犯され、変な気持ちになっていた。


「・・・み、やぎっ」


  指一本受けれなかった蕾が先端に触れた途端、ぴくりと反応し口を開く。
 まるで愛するひとを探すように開かれたそこへ、今だっと堅い先端をねじ込んだ。


 痛ッ・・・!


  火傷をしたみたいに中が熱い。
 摩擦が激しいのか、そこには快感のかけらもない。
 いつもやってくる痛みとは違う別の何かで。
 まるで体がこれは違うと嫌がっているようだった。

  痛みをこらえ、上下左右にそれを動かす。
 ローションが足りないのかと足し注ぐも、腹の中の違和感は消えず、ちっとも気持ち良くならなかった。

  あッぁッ痛い・・・っ
 いたッ・・・宮城・・・っ
 俺、下手な上に感じなくなったのか・・・なっ

 ぐちゅぐちゅと聞こえる音は、あのひとがくれる音と似ているのに、他人に犯されているような苦しみが、
胸の中に渦巻いていた。